コラム
矯正治療で歯が動くメカニズム
矯正治療で歯が動くメカニズムとは?~目に見えない骨のリモデリングのしくみ~
はじめに:歯はどうして動くのか?
矯正治療を考えている方の多くが最初に疑問に思うのが、「どうして歯が動くのか?」という点ではないでしょうか。金属のワイヤーや透明なマウスピースで歯を押しただけで、どうして長年固定されていた歯の位置が変わるのか、不思議に思われるのも当然です。

実は、歯が動く背後には「骨のリモデリング(再構築)」という人体の自然な仕組みが深く関わっています。ここでは、矯正治療の基礎原理である「歯が動くメカニズム」について、できるだけわかりやすく、かつ専門的な視点も交えながら解説していきます。
歯は「骨」に埋まっているのではない
まず大前提として、歯は骨に直接固定されているわけではありません。歯の根(歯根)は「歯槽骨(しそうこつ)」というあごの骨の中にあり、そこに「歯根膜(しこんまく)」という0.2mm程度の薄い膜でつながっています。
この「歯根膜」が歯のクッションの役割を果たし、食事の際の噛む力や、矯正の力を感知して、骨を動かす司令塔のような働きをします。
矯正治療で加わる「力」が歯を動かすきっかけ
矯正治療では、ワイヤーやアライナーを用いて、歯に「持続的かつ適切な力」を加えます。この力が歯を押したり引いたりすると、歯根膜の一方が押しつぶされ、反対側が引っ張られる状態になります。
- 押される側(圧迫側):歯槽骨が吸収されてスペースができます
- 引っ張られる側(牽引側):骨が新たに作られていきます
つまり、力を加えることで骨が一時的に溶けて(吸収)、新たな場所に再生(添加)されることで、歯がゆっくりと動いていくのです。
骨の「リモデリング」とは?:歯が動く本質
この一連の骨の変化を「骨リモデリング(Bone Remodeling)」と呼びます。これは歯に限らず、全身の骨で日々行われている自然な代謝の一部です。
骨を溶かす細胞=破骨細胞(はこつさいぼう)
矯正によって歯が押されている側では、歯根膜が圧迫されて血流が減少します。この圧迫に反応して「破骨細胞」が集まり、歯槽骨を溶かし始めます。これがスペースを生み出す第一段階です。
骨を作る細胞=骨芽細胞(こつがさいぼう)
反対側の引っ張られている部位では、血流が促進され、骨芽細胞が活発に働きます。骨が新たに作られることで、歯が動いた先の位置で安定して固定されていくのです。
歯はどのくらいのスピードで動く?
矯正中の歯の移動速度は、一般的に1か月あたり0.5〜1mm程度です。これ以上急激に動かそうとすると、歯根吸収(歯の根が溶ける)や歯周組織へのダメージが発生するリスクがあるため、歯科医師は力の強さと方向を慎重にコントロールしてます。
矯正治療が平均で1〜3年程度かかるのは、この生理的なスピードを守りながら、無理のない範囲で歯列を整えていく必要があるからです。
歯の動きに影響を与える要素
歯がどのように、どのくらい動くかは、以下のような様々な要因に左右されます。
要因 | 説明 |
---|---|
年齢 | 若年者ほど骨代謝が活発で、歯が動きやすい |
骨の硬さ | 骨密度が高いほど動きにくく、低いほど動きやすい |
炎症の有無 | 歯周病などがあると、意図しない方向に動くリスクが |
力のかけ方 | 過剰な力は逆効果。軽く持続的な力が理想 |
全身の健康状態 | 骨粗鬆症や糖尿病などが影響する場合も |
矯正治療における「力の質」が重要
歯を動かすために必要なのは、「強い力」ではなく「適切で持続的な力」です。矯正の力は通常、持続的に12〜24時間以上かかっていることで、初めて歯根膜が反応し、骨が再構築されます。
そのため、マウスピース型矯正(インビザラインなど)では、装着時間(1日20〜22時間以上)を守ることが、歯の動きにとって極めて重要です。
歯の動きには「タイムラグ」がある
歯は、力を加えた瞬間にすぐ動くわけではありません。破骨細胞や骨芽細胞の働きには数日〜数週間のタイムラグがあるため、治療後すぐに見た目の変化がないとしても焦る必要はありません。
特に、治療開始から3か月ほどは「見た目があまり変わらない」と感じる方が多いですが、これは歯の土台となる骨の準備段階が進行している時期です。
治療終了後も重要な「保定期間」
歯が理想的な位置に動いた後も、すぐに装置を外してしまうと、歯は元の位置に戻ろうとする「後戻り(リラプス)」を起こします。これを防ぐために行うのが「保定(ほてい)」です。
保定装置(リテーナー)を一定期間使用することで、歯の周囲にある骨や歯根膜が新しい位置に馴染み、安定していきます。保定期間は通常半年~数年とされ、矯正の結果を長く維持するための大切な仕上げです。
まとめ:矯正治療の裏側にある「目に見えないドラマ」
歯が動くという現象の裏には、単なる「力づくの移動」ではなく、人体の高度な生理機能=骨のリモデリングが働いています。これは非常に繊細なプロセスであり、矯正治療はそれを医学的にコントロールすることで、歯並びや噛み合わせを理想的な状態へ導く医療技術です。
この理解を深めることで、矯正中の痛みや治療の長さにも納得感を持って取り組むことができるでしょう。
当院では、歯並び無料矯正相談(カウンセリング)を行っています。
「自分の歯の状態は治療した方がいいのか」「まだ治療をするか決まっていない」「費用を確認してから検討したい」などお考えの方もお気軽にお問い合わせください。
無料相談のお問い合わせはこちらからよろしくお願いいたします。
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